
freeeとマネーフォワード、どちらを選ぶか——分かれ目は簿記の経験
- クラウド会計
- freee
- マネーフォワード
- 会社設立
会社設立の記事で、freeeにもマネーフォワードにも会社設立を支援するサービスがあり、どちらを使っても設立の手続きは進められる、とお伝えしました。
ただ、この設立サービスは会計ソフトと地続きです。設立のときに入力した会社の情報は、そのまま同じ会社の会計ソフトに引き継がれます。設立が済んだら、その流れで日々の記帳へ入っていく形になります。
つまり、設立サービスをどちらで使うかを決めた時点で、会計ソフトも実質的に決まります。設立の手続きを始める前に、会計ソフトのほうから考えておくほうが順序として自然です。
この記事は、その決め方です。
先に、こちらの立場を
当法人はfreeeの認定アドバイザーです。1つ星から5つ星まであるランクのうち4つ星、上から2番目にあたります。
マネーフォワードの公認メンバーでもあります。こちらはブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナの4段階で、当法人はいちばん下のブロンズです。
両方を実務で使っていますが、関わりの深さは数字のとおりfreeeのほうが上です。
その理由は記事の最後に書きます。まずは一般的な整理から進めます。
両社が自分で何と言っているか
いちばんフェアな比較材料は、両社が自社サイトで掲げている言葉だと思います。ここに設計思想がそのまま出ています。
freee会計のトップページはこうです。
会計業務を、誰でも、流れるように。
強みとして最初に挙げられているのが「入力は一度だけ」。取引の入口から帳簿までを一本でつなぐ、という考え方です。
参考: クラウド会計ソフトfreee会計
一方のマネーフォワード クラウド会計は、製品の説明としてこう書いています。
経理経験者の使いやすさにこだわった設計
複式簿記を採用していることも、あわせて挙げられています。
参考: マネーフォワード クラウド会計
「誰でも」と「経理経験者」。両社が自分で書いている言葉が、そのまま狙っている相手の違いを表しています。どちらが優れているという話ではなく、想定している使い手が違うということです。
分かれ目は、簿記の経験
ここが選択の中心です。
マネーフォワードは仕訳を積み上げていく形なので、入力の画面に「借方」「貸方」が出てきます。簿記を学んだ方や、これまで別の会計ソフトを使ってきた方には慣れた形です。振替伝票も、日常的に使う機能として置かれています。
freeeは日々の入力を「取引」という単位で扱います。借方・貸方を意識せずに、お金が入った・出たという事実を登録していけば帳簿ができあがる設計です。
この違いが実務でいちばん出るのは、手が止まる回数です。簿記の経験がない方がマネーフォワードを使うと、「これは借方なのか貸方なのか」で止まり、その都度調べることになります。freeeならそこで止まりません。
逆に、簿記の経験がある方がfreeeを使うと、頭の中で描いている仕訳と画面の構造が一致しないぶん、かえって回りくどく感じます。仕訳で考えられる人には、素直に仕訳を打てるほうが速いからです。
たとえば、預金から現金を10万円引き出したとき。仕訳で考えるなら「現金/普通預金」と書けば終わりですが、簿記を知らない方にはどちらが左でどちらが右かからの話になります。freeeでは口座間の資金移動として登録します。同じことを、簿記の言葉を使わずに済ませられます。
こうした小さな引っかかりが、日々の入力では何度も出てきます。
整理するとこうなります。
- 簿記の経験がない → freee。止まらずに進められる
- 簿記の経験がある、または他の会計ソフトを使ってきた → マネーフォワード。慣れた形のまま移れる
なお、止まらずに入力できることと、内容が正しいことは別の話です。そこは入力でつまずきやすい場面のほうにまとめました。
AIとの連携は、対応の有無ではなく範囲で差がつく
AIは、文章を書かせる道具から業務システムを操作する道具へ広がりつつあります。「先月の経費で大きいものを挙げて」と話しかけて済むなら、確認のために画面を開く回数は減ります。
もっとも、会計データをAIに直接触らせることには慎重な見方もあります。読ませるだけにするのか、書き込みまで許すのか。ここは各社が判断する話で、決まった正解はありません。当法人も、顧問先のデータを扱う経路には条件を設けています。
ただ、つなげる用意があるかどうかで選べる幅は変わります。その「つなぐ」部分を担う共通の仕組みがMCPで、2026年3月、両社が相次いでMCPサーバーを公開しました。
対応しているかどうかで言えば、両社とも対応済みです。差が出るのは範囲です。
- freee(2026年3月2日)——会計だけでなく人事労務・請求書・工数管理・販売まで、約270本のAPIをAIから呼べる形に。オープンソースで公開
- マネーフォワード(2026年3月26日)——対象はクラウド会計。仕訳や試算表の読み取りに加え、仕訳の新規作成・更新まで対応。有料利用者は追加料金なし
記帳をAIに手伝わせたいだけなら、どちらでも足ります。給与や請求書の発行まで含めてバックオフィス全体を任せていきたいなら、現時点ではfreeeのほうが広く手が届きます。
なお、弥生もクラウド版を提供していて、3大クラウド会計ソフトと呼ばれます。ただしMCPへの公式対応は発表されていません(2026年8月時点)。ここを判断材料に入れるなら、候補はこの2つになります。
料金は、どちらも「ひとり法人」の区分がある
会社を作ったばかりの段階で気になる料金も確認しておきます。両社とも社長おひとりの会社向けのプランを用意しています(いずれも年払いの月額換算・税抜)。
| freee | マネーフォワード | |
|---|---|---|
| ひとり法人向け | 2,980円/月 | 2,480円相当/月 |
| 制約 | 利用1人 | 利用1名・仕訳数500件/年まで |
| その上のプラン | スターター(新設法人向け)5,480円/月+従量課金 | スモールビジネス 4,480円相当/月 |
金額だけ見ればマネーフォワードのほうが低く出ますが、仕訳数の上限があります。取引が増えれば上のプランに移ることになるので、初年度の金額だけで決めないほうが安全です。
料金は改定されます。契約前に必ず公式サイトの最新の料金表をご確認ください。
決め方の順番
比較サイトの機能一覧を並べても、たいてい結論は出ません。主要な機能はどちらもそろっていますし、インボイス制度も電子帳簿保存法も両社とも対応済みです。
見る順番はこうです。
1. 自分は仕訳で考えるか、考えないか。ここでほぼ決まります。両社が自分で書いている言葉のとおりに選ぶのが、いちばん外しません。
2. 依頼する予定の税理士事務所が、どちらに慣れているか。事務所によって対応できるソフトは違いますし、慣れているほうが確認も相談も速くなります。ソフトを決めてから事務所を探すより、並行して考えるほうが手戻りがありません。
3. 料金。上の2つで差がつかなかったときに見る項目です。ここから見始めると、たいてい選び直すことになります。
決まったら、その会社の設立サービスを使って手続きに入ります。順序としてはこうなります。
当法人がfreeeを勧める理由
ここまでは一般的な整理です。最後に、冒頭で触れた立場の中身を書きます。
freeeを主に使い始めたのは2018年、私が個人事務所として独立したときです。個人事業主のお客様を含めて、そこから積み上げてきました。2023年に税理士法人となってからも、その方針は変えていません。
1. 簿記を知らない方が、複式簿記の帳簿を作れる
小さな会社で経理をするのは、たいてい簿記の専門家ではありません。社長ご本人か、ご家族か、他の仕事と兼務している方です。
freeeの「取引」という考え方は、そこを設計で解いています。お金が入った・出たという事実を登録していく感覚は、家計簿に近いものです。それでいて、できあがるのは複式簿記の帳簿です。入力する側の頭の使い方を変えずに、必要な帳簿が出てくる。ここに手応えがありました。
記事の中ほどで書いた「手が止まらない」は、この話の言い換えです。8年近く使ってきて、この評価は変わっていません。
2. AIに任せられる範囲が、会計の外まで及んでいる
誤解のないように先に書いておくと、周辺サービスの品揃えでは両社に差がありません。給与計算、請求書、勤怠、経費、年末調整、会社設立。どちらも一通りそろえていますし、製品の数だけならマネーフォワードのほうが多いくらいです。
差があるのは、そろえた業務のうちどこまでをAIから操作できるかです。AI連携の章で書いたとおり、freeeのMCPサーバーは会計に加えて人事労務・請求書・工数管理・販売まで対応しています。マネーフォワードは会計です。しかもオープンソースとして公開されているので、中身を確認したうえで使えます。
これは2018年に見えていたことではありません。ただ、新しい仕組みに早めに踏み込み、外に開いた形で出してくる姿勢は、1で書いた作り方と地続きだと感じています。人を雇う、外注が増える、と業務が広がったときに、AIに任せられる範囲もそのまま広がるかどうかは変わってきます。
3. 事例が集まっている
当法人の顧問先が使っている会計ソフトは、8割から9割がfreeeです。同じソフトを多く見ているぶん、「その画面のここを直せば済みます」という粒度でお答えできます。
これは製品の優劣ではなく、当法人に依頼した場合の話です。マネーフォワードに強い事務所であれば、逆のことが言えます。決め方の2番目に「依頼する予定の事務所がどちらに慣れているか」を挙げたのは、そのためです。
そのうえで、マネーフォワードでのご依頼もお受けしています。簿記の経験がある方が慣れた形で自社入力を回せるなら、それがいちばん効率的です。ソフトに合わせて無理をする必要はありません。
まとめ
- 会社設立サービスは会計ソフトと地続き。設立の手続きを始める前に、会計ソフトから決める
- 両社は狙っている相手が違う。freeeは「誰でも」、マネーフォワードは「経理経験者」と自分で書いている
- 選択の中心は簿記の経験があるかどうか。経験がなければfreee、あればマネーフォワード
- AI連携は対応の有無ではなく範囲で差がつく。会計だけならどちらでも、周辺業務まで含めるならfreee
- 料金はどちらもひとり法人向けプランがある。ただし仕訳数の上限に注意
どちらを選ぶかの段階からご相談いただけます。まずはお気軽にお問い合わせください。
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