
税理士費用に「相場」がない理由と、見積もりの比べ方
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税理士に頼もうと考えたとき、最初に知りたいのは「いくらかかるのか」だと思います。
ところが調べてみても、事務所ごとに金額の出し方がばらばらで、自社に当てはまるものが見つかりません。そもそもサイトに「お見積り」としか書いていない事務所も多く、並べて比べることすらできない。
この記事では、なぜそうなっているのかと、見積もりを受け取ったときにどこを見ればよいのかを整理します。
統一された料金表は、制度として存在しない
金額の基準が見つからないのには、はっきりした理由があります。
かつては税理士会が報酬規定を定めていて、報酬には上限額がありました。それが2002年(平成14年)4月1日施行の改正税理士法で廃止されています。日本税理士会連合会は、その後の扱いをこう説明しています。
税理士又は税理士法人は自由な意思のもと自己責任と説明責任に基づいて報酬を算定し委嘱者に請求することとなりました
つまり、料金は事務所ごとに自由に決められています。業界共通の価格表があって、そこから各社が上下しているわけではありません。「相場」として紹介されている金額も、根拠となる調査が示されていないことが少なくありません。
同じページには、依頼する側にとって重要な一文もあります。委嘱の範囲と報酬額について契約書を締結することを勧める、という記載です。範囲と金額はセットで確認するもの、という前提がここにあります。
金額を動かしている5つの要素
料金が自由である以上、比べるには「何で決まっているか」を知る必要があります。事務所ごとに違いはありますが、公開されている料金表を見ていくと、使われている軸はおおむね次の5つに整理できます。
1. 事業規模
年商(売上高)です。公開されている料金表を見ると、ほぼどの事務所も年商で段階を分けています。取引の件数が増えれば確認する量が増えるためです。
ただし区切りの位置は事務所によってまちまちです。1,000万円・3,000万円・5,000万円・1億円あたりに置かれることが多い一方、10段階以上に細かく刻んでいる事務所もあります。従業員数を加味する事務所もあります。
2. 記帳を誰がやるか
自社でクラウド会計に入力するのか、事務所に記帳代行を頼むのか。業界では自社で入力する形を「自計化」と呼びます。
記帳代行は、顧問料とは別料金にしている事務所がほとんどです。しかも多くは仕訳の件数に応じた従量制で、「1仕訳あたり◯円」「月100件増えるごとに◯円加算」といった形をとります。手を動かす作業量がそのまま金額になるためです。
つまり、取引件数が増えるほどここの差が開きます。クラウド会計の入力でつまずきやすい場面を押さえて自社入力を回せるかどうかは、費用に直結する判断です。
3. 面談の頻度
毎月訪問するのか、3か月に1回か、半年に1回か、年1回か。訪問の回数がそのまま料金表の段階になっている事務所は非常に多いです。3段階から6段階に分けている例が見られます。担当者が移動して対面で説明する時間は、そのまま費用になるためです。
近年は「訪問なし・オンラインのみ」をいちばん安い段階として置く事務所も増えています。ここは金額だけでなく、自社が求める距離感と合っているかで見る項目です。
4. 決算・申告以外にどこまで含むか
給与計算、源泉所得税の納付書の作成、年末調整、法定調書の作成、償却資産税の申告。これらは「税理士に頼むこと」と一括りにされがちですが、実際には個別の業務です。基本料金に含む事務所と、オプションとして別料金にする事務所があります。
なかでも源泉所得税は、社長ひとりの会社でも、役員報酬を払っていれば必ず発生します。人を雇っていなくても出てくるので、含まれているかどうかを確認してください。
5. 対応の複雑さ
これだけは性質が違います。料金表に列としては現れないのに、実際の見積もりでは効いてきます。
規模が同じでも、部門ごとに損益を分けている、外貨の取引がある、といった事情があれば手間は増えます。株主や金融機関のように数字を見せる相手がいて、毎月の試算表を早く求められる場合も同じです。求められる精度と速さが変わるためです。上場の準備に入っていれば、その水準はさらに上がります。すでに上場している会社なら、開示のスケジュールや監査法人への対応が加わり、料金の考え方そのものが変わります。
公開されている料金表では、この部分は「業務量・複雑性・所要時間やお客様規模などにより異なります」といった但し書きで処理されているのが普通です。つまり表の金額を見ただけでは分かりません。
当てはまりそうな事情があるなら、見積もりを頼む時点で自分から伝えてください。あとから追加請求として出てくるより、先に織り込んでもらうほうが安全です。
見積もりは、総額ではなく内訳で比べる
ここが実務上いちばん大事なところです。月額だけを並べて比べると、判断を誤ります。
確認したいのは次の6点です。
- 決算料は月額と別か、含まれるか。実際の料金表を見ると、決算料を別建てにしている事務所がほとんどです。月額の3か月分から10か月分に相当することもあれば、月額とは無関係に金額を設定している事務所もあります。年間総額がここでいちばん大きく動きます
- 記帳代行が入っているか。自社入力が前提の金額なのか、代行込みなのか
- 消費税の申告が入るか。免税事業者のうちは意識しませんが、課税事業者になると毎期発生します
- 源泉所得税・年末調整・法定調書・償却資産税申告の扱い。役員報酬を払っている、人を雇っている、資産を持っている。どれかに当てはまるなら必ず出てきます
- 面談の回数と方法。年何回か、訪問かオンラインか
- 期中の質問対応。回数制限があるのか、都度課金なのか
月額が安く見えても、決算料が別で、記帳代行が別で、年末調整が別なら、年間で払う額は逆転します。比べるなら、1年間に払う総額に揃えてから比べてください。
いつ頼むかで、同じ金額の価値が変わる
もうひとつ、金額そのものより効いてくるのが時期です。
設立前から設立直後なら、会計ソフトの選定、事業年度の決め方、消費税の届出、そして役員報酬をいくらにするかまで、選べる状態で相談できます。
期首から3か月以内なら、役員報酬はまだ動かせます。
期の途中でも、利益の見込みを立てて手を打つ余地はあります。
決算直前になると、できるのは「記録を正しくまとめること」だけです。その事業年度の選択はすでに終わっていて、動かせません。
つまり、決算直前に依頼すると、同じ報酬を払っても受け取れるものが少なくなります。費用を抑えたいなら、安い事務所を探すより、選択の余地が残っている時期に相談するほうが効きます。
決算・申告だけをスポットで依頼する形も選べますし、判断が必要な場面が少ないうちはそれで十分です。ただしその形は「記録をまとめる」ことはできても、「選択を有利にする」余地は限られる、という違いは知っておいてください。
当法人の場合
比べる材料のひとつとして、当法人が上の5つの軸をどう置いているかをお伝えします。
税務顧問は法人は月額22,000円から、個人は月額11,000円から(いずれも税込)です。金額は事業規模・資産規模をベースに、記帳のご担当者様のご経験、株主・金融機関など利害関係者の要望、対応の複雑さを考慮して見積もります。5つめの「対応の複雑さ」も、はじめの見積もりの段階で織り込みます。
3つめの「面談の頻度」については、訪問回数で料金を分ける形をとっていません。SlackやLINEなどのチャットを中心に、年2回程度のオンライン面談を基本としています。必要があれば面談を追加します。この形にしているため全国対応が可能で、遠方かどうかで金額が変わることもありません。
決算料は税務顧問料に含まれており、別途請求していません。決算料を別建てにする事務所が多いので、比べるときはここを揃えてご覧ください。
ただし契約初年度で、契約月から申告月までの期間が6か月未満の場合は、税務顧問料の6か月分を最低金額としてご請求しています。
契約は原則1年単位ですが、決算申告のみのスポット対応も承っています。記帳代行、年末調整、法定調書、償却資産税申告は、税務サポートとして別に承ります。
まとめ
- 税理士報酬は2002年に自由化されており、統一された料金表は存在しない
- 金額を動かすのは、事業規模・記帳を誰がやるか・面談の頻度・業務の範囲・対応の複雑さの5つ。最後のひとつは料金表に現れないので、自分から伝える
- 見積もりは月額でなく、1年間の総額に揃えて内訳で比べる。差がいちばん大きく出るのは決算料
- 決算直前に頼むと、同じ金額で受け取れるものが減る
金額の妥当性は、何が含まれているかが分からないと判断できません。他社の見積もりをお持ちでしたら、その内訳を一緒に見るところからでも構いません。まずはお気軽にご相談ください。
どこから頼むべきか、迷っていませんか
税理士法人ZENでは、初回30分のご相談を無料で承っています。「いま頼むべきかどうか」を整理するところからでも構いません。クラウド会計に精通した公認会計士・税理士が、全国どこからのご相談にも対応します。
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