
法人カードは何で選ぶか——狙うのはクレジット、確実なのはデビット
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先に書いておくと、法人カードは必ず要るものではありません。
会社の支払いは、法人口座があればだいたい回ります。振込と口座振替で足りますし、現金や社長の立替という手もあります。口座と違って、カードが無いと止まる手続きはありません。
それでも、あると楽になります。この記事は、その「あると便利」をどう選ぶかの話です。
カードを持つと、立替精算が消える
社長個人のカードや現金で会社の経費を立て替えると、毎月の精算が仕事として残ります。明細のうち事業分だけを拾い出して、会社から精算する。1件ずつは小さくても、月をまたぐと積み上がります。
立替精算そのものが悪いわけではありません。ただ、法人カードを1枚持てば、この作業自体が要らなくなります。これが「あると便利」の中身です。
創業期に絞られるのは、クレジットのほう
先に効いてくるのは、どれが得かではなく、クレジットが通るかどうかです。
デビットカードは口座があれば作れるので、創業期でも選択肢は減りません。絞られるのはクレジットのほうです。審査は決算書を見るのが普通ですが、1期目はそれがありません。会社の状態が悪いわけではなく、判断の材料がないだけです。
だから決まり方は2つになります。デビットかクレジットか。そしてどの系統のカードを選ぶか。
デビットカードか、クレジットカードか
デビットカードは、口座の残高の範囲で使います。決済と同時に引き落とされ、カード会社が立て替える部分がないので、与信の審査がいりません。法人口座があれば、まず止まりません。
クレジットカードは、支払いが後ろにずれます。引き落としまでのあいだ、その分の現金が手元に残る。創業期は入金より先に出ていくお金が多いので、この猶予は効きます。代わりに審査があり、決算書がない時期は枠が小さく出るか、そもそも通らないことがあります。
なお、法人カードには事前チャージや保証金という形もあります。呼び方は違いますが、残高の範囲で使い、与信の審査がいらない点はデビットカードと同じです。この記事では、まとめてデビットと呼びます。
カードは3つの系統に分かれます
発行元で3つに分かれると押さえておくと早いです。誰が発行し、何を見て与信し、経理に何が残るかが変わります。
銀行系——口座に付いてくる
法人口座を作った銀行が出すカードです。口座の記事で挙げた4行は、いずれも法人向けのデビットカードを発行できます。年会費は無料で、口座があれば審査で止まりません。キャッシュバックやポイントは1%前後が目安です。
クレジットカードも、多くの銀行に用意されています。ただし作り方はばらばらで、決算書が不要なもの、デビットカードにクレジット機能を追加できるもの、代表者個人の有料カードが前提のものまであります。口座を選ぶときに、あわせて見ておくところです。
弱いのはカードを分ける機能です。従業員カードやETCカードは出せても、用途別にバーチャルカードを何枚も発行する使い方は想定されていません。
それでも、最初の1枚としてはいちばん短い経路です。口座を作るときに一緒に手当てできます。
参考: ビジネスデビットカード(GMOあおぞらネット銀行) / デビットカード(ドコモSMTBネット銀行) / Visaデビットカード(PayPay銀行) / ビジネスデビットカード(楽天銀行)
経理に寄せた法人カード——枚数と統制を商品にしている
カードの管理そのものを商品にしている系統です。代表的なのはUPSIDER、バクラクビジネスカード、マネーフォワード ビジネスカード、freeeカード Unlimitedの4枚。用途ごとにバーチャルカードを何枚も発行し、誰がどこにいくらまで使えるかを事前に決められます。
会計ソフトの会社が出しているものも含めますが、分ける意味はありません。機能はほぼ同じで、差は別のところに出ます。
創業期に効いてくるのは、デビットとしても使えるかどうかです。クレジットの審査が通ればそのまま始められますが、通らなかったときに待たされるか、デビットとして使い始められるかで差が出ます。
| カード | デビット | クレジット | ETC |
|---|---|---|---|
| UPSIDER | ○ | ○ | ○ |
| バクラクビジネスカード | ○ | ○ | ○ |
| マネーフォワード ビジネスカード | ○ | ○ | ○ |
| freeeカード Unlimited | ✕ | ○ | ✕ |
デビットの列は、実際には事前チャージか保証金という形です。バクラクビジネスカードの保証金プランは「入金金額分のご利用可能枠を毎月弊社から付与」する仕組みで、与信審査に関わらず利用できます。
4枚とも年会費は無料で、バーチャルカードも無料、決算書の提出も要りません。差が出るのはデビットの列です。上の3枚は審査が通らなくてもデビットとして始められますが、freeeカード Unlimitedだけはデビットがなく、クレジットの審査が通ることが前提になります。
連携できる会計ソフトも違います。UPSIDERとバクラクビジネスカードはfreee会計とマネーフォワード クラウド会計の両方に対応し、マネーフォワード ビジネスカードとfreeeカード Unlimitedはそれぞれ自社の会計ソフトへの連携です。会計ソフトをまだ決めていないなら前の2枚、決まっているならその会社のカードも候補になります(freeeとマネーフォワード、どちらを選ぶか)。
還元も違います。マネーフォワード ビジネスカードは1〜3%、UPSIDERは基本1.0%から、バクラクビジネスカードはキャッシュバック0.8%。freeeカード Unlimitedは0.3〜0.5%で、使い道はfreeeサービスの利用料への充当です。
バクラクの公式ページは、還元率を「1.0%」と表示したまま、同じ画面に「※10月以降は0.8%」と注記しています。10月に入ったので、いま申し込むなら0.8%で見ます。ETCと一部の利用先はキャッシュバックの対象外です。
そして明細の入り方。4枚とも決済のたびに明細が流れるので、月が変わった時点で前月分が揃います。締め日を過ぎないと確定しない従来のカードとは、月次のタイミングが変わります。ただし明細が入ることと、仕訳が正しいことは別です。自動で付く勘定科目は候補にすぎません(入力でつまずきやすい場面)。
参考: UPSIDER / バクラクビジネスカード / マネーフォワード ビジネスカード / freeeカード
ステータス系——この記事では扱いません
年会費が高い代わりに、旅行傷害保険や空港ラウンジ、会食の優待が付くカードです。アメリカン・エキスプレスのビジネスカードや、ラグジュアリーカードの法人決済用カードなどがこの系統にあたります。
ここは好みの領域だと思っています。経理が楽になるかどうかで決まるものではなく、出張や会食の頻度、どのブランドを持ちたいかで選ぶもの。この記事では扱いません。
創業期のカードの選び方
狙うのはクレジットです。支払いが後ろにずれるぶん、資金繰りに効きます。ただ審査がある以上、通るかどうかは読めません。通らなかったときに止まらないように、確実なほうも押さえておく——という順番になります。
1. 口座を作るときに、銀行系のデビットを1枚——法人口座があれば作れます。審査で止まらないので、ここは確実に埋まります。
2. 経理に寄せた法人カードで、クレジットを取りにいく——申し込むならデビットとクレジットの両方があるものから。審査が通れば資金繰りの猶予が付きますし、通らなくてもデビットとして使い始められます。そのまま使いながら与信枠が付けば、クレジットに移れます。
まとめ
- 法人カードは必須ではない。口座があれば振込と口座振替で回る。ただ持つと、毎月の立替精算が消える
- 分岐はデビットかクレジットか。事前チャージと保証金もデビット側で、与信の審査がいらない
- 系統は3つ。銀行系は口座に付いてくる、経理に寄せた法人カードは枚数と統制、ステータス系は好みの領域
- 狙うのはクレジット。ただ審査が読めないので、確実に作れるデビットも押さえておく。4枚のうち3枚は通らなくてもデビットとして使え、枠が付けばクレジットに移れます
法人カードは、あると便利な決済の道具です。ただ選び方を間違えると、楽になるはずの経理の仕事がかえって増えます。設立の段階からご相談いただけます。
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