
法人口座はどこに作るか——ネット銀行で足りる場面と、足りない場面
- 会社設立
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会社を作った直後にやることは、大きく2つに分かれます。期限が決まっているものと、自分で順番を決めるものです。
前者は届出や申請です。社会保険の新規適用届のように、法律で提出期限が決まっています。後者は、銀行口座・クレジットカード・会計ソフトといった選択です。こちらに法定の期限はありません。
期限がないほうを後回しにしたくなりますが、実際には口座から先に動かすほうが早く落ち着きます。この記事は、その理由と、結局どこに作るのがよいのかの話です。
口座は、期限ではなくリードタイムで動く
法人口座に提出期限はありません。それでも先に動く理由は2つあります。
ひとつは、後続が全部ぶら下がっていることです。クレジットカードの引き落とし先になり、クラウド会計の連携元になり、売上の入金先になり、給与や外注費の振込元になります。口座が決まらないと、そのどれも始まりません。
もうひとつは、開設に時間がかかることです。銀行は犯罪収益移転防止法にもとづいて、会社の名称と本店・取引目的・事業の内容・実質的支配者を確認することになっています。このうち「事業の内容」は定款や登記事項証明書などで確認する決まりなので、登記が完了して謄本が取れるまで、手続きは始められません。
ただし、そこから先の日数は銀行によってかなり違います。ネット銀行はここを競っていて、たとえばGMOあおぞらネット銀行は、マイナンバーカードの読み取りか自撮り動画で本人確認をする場合に最短即日を掲げています。窓口に出向く前提の銀行だと、来店の日程や書類のやり取りが入るぶん、日数が読みにくくなります。
もっとも、即日といっても完全に終わるわけではありません。キャッシュカードは簡易書留で登記住所に届くので、受け取れる人がいる状態にしておく必要があります。
参考: 法人口座開設に係る取引時確認について(金融庁) / 最短即日かんたん口座開設(GMOあおぞらネット銀行)
見る順番は、この3つ
金利や知名度から入ると、たいてい選び直すことになります。創業期に効く順に並べるとこうなります。
1. 使う予定の会計ソフトと連携できるか
これが最優先です。
freeeやマネーフォワードを使うなら、日々の記帳は口座の明細が自動で入ってくることを前提に組み立てられています。明細が入れば仕訳の候補まで出ます(候補が正しいとは限らない点は入力でつまずきやすい場面にまとめました)。逆に、入らない口座を選ぶと、そこだけ手入力に戻ります。創業期は取引の本数が少ないので気づきにくく、取引が増えてから効いてきます。
注意すべきは、どの銀行とも自動でつながるわけではないことです。銀行の規模や知名度とは関係がなく、会計ソフト側が対応しているかどうかで決まります。口座を作る前に、使う予定の会計ソフト側で確認してください。
とはいえ、この記事の最後に挙げる4行は、freee・マネーフォワードとも法人口座の連携に対応済みです。そこから選ぶなら、この点で迷うことはありません。
2. 毎月の引き落としと、融資の窓口になるか
会社になると、毎月きまって出ていくお金が増えます。社会保険料と、借入がある場合はその返済です。どちらも口座振替が基本なので、その口座に指定できるかどうかが効いてきます。
社会保険料は、ここ数年で事情が変わりました。以前はネット銀行を指定できませんでしたが、日本年金機構が公開している口座振替可能金融機関の一覧(2026年8月3日更新)には、インターネット専業銀行としてイオン銀行・GMOあおぞらネット銀行・ドコモSMTBネット銀行が載っています。楽天銀行とPayPay銀行は入っていません。
ネット銀行1行で完結させたいなら、この一覧を先に見てください。会計ソフトと公庫だけを見て決めると、社会保険料だけ別口座から落ちることになります。なお、ネット銀行を指定する場合は手続きが少し違い、金融機関の確認を受けずに、管轄の事務センターか年金事務所へ直接申出書を出します。
日本政策金融公庫の返済も、いまはネット銀行を指定できます。公庫は口座がどこにあっても申し込めますが、返済は原則として口座振替で、2023年2月からインターネット専業銀行が対象になりました。
そうはいかないのが、自治体の制度融資です。制度融資は、自治体・信用保証協会・指定金融機関の三者で成り立っています。たとえば新潟県の取扱金融機関は、地元の銀行・信用金庫・信用組合・商工中金・JAなどで、ネット銀行は1行も入っていません。仕組みはどの都道府県でも同じで、指定される金融機関がそれぞれ違います。
つまり、制度融資を使う可能性があるなら、その窓口になる金融機関に口座が要ります(創業融資の記事でも触れました)。
参考: 厚生年金保険料等・国民年金保険料の口座振替可能金融機関一覧表(日本年金機構) / インターネット専業銀行からの口座振替によるご返済の取扱開始のお知らせ(日本政策金融公庫) / 新潟県制度融資取扱金融機関について(新潟県)
3. 手数料
最後に費用です。ネット銀行が有利なのは、ここです。
見るのは口座維持手数料と他行あての振込手数料、それと開設直後の無料回数の3つで足ります。従来型の銀行はインターネットバンキングの利用料が月数千円かかることがあり、そこがいちばん分かりやすい差になります。具体的な金額は、この記事の最後にまとめました。
結論:ネット銀行を軸に、地元にもう1つ
3つの軸で見ると、創業期はネット銀行で足ります。公庫の返済口座に指定できるようになったことで、実質的に不足がなくなりました。
2026年8月時点で、会計ソフトの連携と公庫の返済口座の両方を満たすネット銀行は次の4行です。この2点はどれも同じで、4行とも freee・マネーフォワードの法人口座連携に対応していて、公庫の返済口座にも指定できます。差が出るのは、社会保険料と手数料です(金額は税込)。
| 銀行 | 社会保険料 | 他行あて振込 | 開設直後の無料枠 |
|---|---|---|---|
| GMOあおぞらネット銀行 | ○ | 100円 | 月20回・12か月 |
| ドコモSMTBネット銀行 | ○ | 145円 | あり |
| PayPay銀行 | — | 145円 | あり |
| 楽天銀行 | — | 150円/229円 | — |
口座維持手数料は4行とも0円です。同行あての振込も、楽天銀行だけ52円かかりますが、残る3行は0円です。GMOあおぞらネット銀行の無料枠は、設立1年未満の会社なら月20回まで12か月間と幅があります。
楽天銀行だけ、料金の作りが違います。他行あてが金額で150円と229円に分かれ、同行あても有料です。振込の本数が多い事業だと、ここが効いてきます。
ドコモSMTBネット銀行は、2026年8月3日に住信SBIネット銀行から商号が変わりました。古い記事では旧名で載っていることがあります。
創業期の1行目としては、この中から選んで問題ありません。ただし社会保険料まで1行で完結させたいなら、上の2行に絞られます。そのうえで、他行あてが最も安く、設立1年未満の無料枠も大きいGMOあおぞらネット銀行から検討するのが素直です。
手数料は改定の多い項目です。申し込む前に、各行の公式ページで最新の金額を確認してください。
参考: 手数料一覧(GMOあおぞらネット銀行) / 振込手数料(PayPay銀行) / 振込(ドコモSMTBネット銀行) / 金利・手数料(楽天銀行)
ただし、2年目から事情が変わります
ネット銀行だけにしておくと、設立から1年を過ぎたころに詰まります。
わかりやすいのが経営セーフティ共済です。取引先が倒産したときに借入ができる制度で、掛金が損金になるため創業期を越えた会社によく検討していただきます。加入できるのは継続して1年以上事業を行っている中小企業者です。
問題は加入の窓口です。中小機構は、ゆうちょ銀行・農協・労働金庫・外資系銀行・インターネット専業銀行等は取り扱っていないと明記しています。金融機関で加入手続きをする場合、その金融機関が次のいずれかである必要があります。
- 融資取引のある金融機関
- 現在、事業上の預金取引を1年以上継続している金融機関の本支店等
ここが効きます。「1年以上の預金取引」は、後から用意できません。設立のときに地元の金融機関にも口座を作っておけば、1年後にその窓口が使えます。作っていなければ、そこから1年待つか、商工会・商工会議所といった委託団体経由で手続きすることになります。
制度融資も同じ構図です。使う場面が来てから口座を作るのでは間に合いません。
口座は1つに絞る必要はありません。日常の決済と記帳はネット銀行、融資と共済の窓口は地元の金融機関。設立の段階でこの2つを押さえておけば、あとから慌てずに済みます。
まとめ
- 設立直後の作業は、期限で動くもの(届出)とリードタイムで動くもの(口座・会計ソフト)に分かれる。後者の先頭が口座
- 口座は登記が済んで謄本が取れてからでないと始まらない。そこから先の日数は銀行差が大きく、ネット銀行は最短即日を掲げる
- 見る順番は、①会計ソフトと連携できるか ②毎月の引き落としと融資の窓口になるか ③手数料
- 会計ソフトの連携・公庫の返済・手数料の3点なら、創業期の1行目はネット銀行で足りる
- ただし社会保険料の口座振替に使えるネット銀行は限られる。4行のうちGMOあおぞらネット銀行とドコモSMTBネット銀行のみ
- 制度融資と経営セーフティ共済の窓口にはならない。とくに共済は「1年以上の預金取引」が窓口の条件なので、設立時に地元の金融機関にも口座を作っておく
口座をどこにするかより、そのあと記帳と資金調達が回るかどうかが問題になります。設立の段階からご相談いただけます。
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