
法人カードで払った経費は何を残すか——カードの明細と、店の領収書
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法人カードは何で選ぶかでは、どのカードを持つかまでを書きました。この記事は、そのカードで払ったあとの話です。
支払いはカードの明細に残ります。ならば、店でもらった領収書は捨ててもいいのか。経理を始めたばかりの方が、最初に迷うところです。答えは、残します。法人税——個人事業主なら所得税——に、帳簿とあわせて書類を保存する義務があるからです。
カードで払ったのに、領収書も残すのか
法人は帳簿に取引を記録し、その帳簿と、取引に関して作成または受領した書類を保存します。保存の対象に、相手方から受け取った領収書が明記されています。法人税法施行規則59条1項3号は、青色申告法人が保存する書類として「取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類」を挙げています。白色申告の場合も、67条1項1号に同じ文言があります。
帳簿には、いつ・いくら払ったかだけでなく、何を買ったかを書きます。総勘定元帳の摘要がそれです。勘定科目を決めるにも、経費として認められることを説明するにも、取引の内容が要ります。領収書やレシートには品目が書かれているので、その記載を裏づける書類になります。
保存期間は確定申告書の提出期限の翌日から7年です。青色申告で欠損金額が生じた事業年度は、繰越控除を受けるなら10年になります。創業期は赤字の期が出やすいので、1期目や2期目が10年の対象になることは珍しくありません。
個人事業主も、残す書類は法人と同じです(所得税法)。違うのは保存期間で、青色申告は原則7年、白色申告は5年です。
例外は、そもそも書類が発行されない取引です。自動販売機で買ったものや、公共交通機関の運賃がこれに当たり、帳簿の記載で足ります。順序は「基本は必要、出ないものが例外」です。
カードの明細が残るなら、領収書はいらないのでは?
そう考える方は多いのですが、カードの明細は領収書の代わりになりません。理由が2つあります。
1つは、出したのがカード会社で、取引の相手方ではないことです。保存の対象は「相手方から受け取った」書類なので、カード会社が作った明細はそこに当たりません。
もう1つは、書いてある内容です。明細に並ぶのは利用日・金額・加盟店名の3つで、何を買ったかは書かれていません。同じ店で消耗品を買った月と、会議で使った月が、明細の上では同じ1行に見えます。帳簿の摘要を埋める材料になりません。
会計ソフトはカードの明細を自動で取り込みます。そのまま確定すると、摘要に残るのは加盟店名だけです。取り込まれた明細と、正しい仕訳は別のものです(入力でつまずきやすい場面)。
集めるのは払った直後がいちばん楽です。決算のときに探すと、半年前の1行が何だったかを思い出す作業になります。
適格請求書(インボイス)は、設立1期目から必要か
ここから消費税の話です。
設立1期目と2期目の会社は、原則として消費税の納税義務が免除されます。基準期間——2期前の事業年度——がないためです。資本金1,000万円以上の法人と、インボイスの登録を受けた会社は、最初から課税事業者です(会社を作ってから最初の1年)。
参考: No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例(国税庁)
課税事業者になると、原則として仕入税額控除のために適格請求書の保存が要件になります。ここでもカード会社の利用明細書は、消費税法30条9項の「請求書等」に該当しません。発行者が課税資産の譲渡等を行った者ではなく、加盟店の登録番号も載っていないためです。控除するなら店から受け取った適格請求書を保存します。レシートの形でも、記載事項を満たしていれば足ります。
ただ、税込1万円未満の支払いなら、適格請求書がなくても控除できます(少額特例)。設立1期目と2期目の会社も対象で、令和11年9月30日までの仕入れに使えます。
参考: クレジットカード会社からの請求明細書(国税庁 質疑応答事例) / 少額特例の概要(国税庁) / インボイスQ&A 問111(国税庁)
簡易課税を選んでいる場合は、仕入側の適格請求書の保存が控除の要件になりません(届出が要ります)。仕入の実額ではなく、売上にかかる消費税額から仕入税額を計算するためです。2割特例も同じ扱いですが、令和8年9月30日を含む課税期間で終わっていて、10月以降に設立した会社は使えません。個人事業主には、令和9年分と令和10年分に限って3割特例があります。
参考: No.6505 簡易課税制度(国税庁) / 3割特例の創設(国税庁)
少額特例も簡易課税も消費税法の中の話で、法人税法や所得税法のほうの保存義務を免除しません。1万円未満だから、簡易課税だから、領収書を捨てていいという話にはなりません。なくなるのは控除の要件としてのインボイスだけで、帳簿を裏づける書類の保存は残ります。
なお、インボイスの登録を受けていない相手からの仕入れには、仕入税額の一定割合を控除できる経過措置があります。これは「いくら控除できるか」の話で、どの書類を残すかという本記事の軸とは別の問いなので、この記事では扱いません。
メールで届いた領収書は、印刷して取っておけばいいか
Webで買った分の領収書は、たいていPDFかメールで届きます。課税事業者かどうかにかかわらず、電子で受け取ったものはデータのまま保存します。紙に印刷しただけの保存は、令和6年1月以降は認められません。
データには、改ざんを防ぐ措置と、日付・金額・取引先で検索できる状態が要ります。ただし設立1期目と2期目は、検索の要件が要りません。
創業期は、ここに当たる支払いが多くなります。クラウドサービスの月額料金、オンラインの広告費、Webで買った備品。カードで払う経費ほど、紙の領収書が手元に残りません。
まとめ
- 帳簿には何を買ったかが要る。それを裏づける書類として、店の領収書やレシートを保存する
- これは法人税法上の義務。保存期間は7年、欠損が出た事業年度は10年。個人事業主も同じで、期間だけが違う
- カードの利用明細は代わりにならない。出したのがカード会社で、何を買ったかも書かれていない
- 課税事業者は、これに加えて仕入税額控除のための適格請求書を保存する
- 少額特例も簡易課税も消費税法の中の話。領収書を残す義務はなくならない
- 電子で受け取った領収書はデータで保存する。印刷だけでは足りない
カードの明細は支払いの記録で、取引の内容を示す証憑は店が出した領収書です。どこまで揃えるかは設立の段階から決められるので、その段階からご相談いただけます。
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