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税理士法人ZEN
右向きの時間軸の線に、旗の付いたマーカーが上側に3つ、旗のない丸が下側に3つぶら下がっている線画。期限が決まっているものと、自分で順番を決めるものの対比を表している

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会社を作ってから最初の1年——期限で動くものと、自分で決めるもの

小武 賢二
  • 会社設立
  • クラウド会計
  • 経理

会社を作ったあと、やることは一気に増えます。届出、口座、会計ソフト、役員報酬、消費税。順番も期限もばらばらで、何から手をつけるか迷うところです。

整理すると、性質が2つに分かれます。

  • 期限が決まっているもの
  • 自分で順番を決めるもの

混ぜて考えると、期限のあるものを落としたり、急がなくていいものを先にやったりします。この記事は、最初の1年の地図です。

期限が決まっているもの

届出です。ここは覚えるより、表で持っておくほうが早いと思います。

手続き期限出す先
健康保険・厚生年金保険 新規適用届事実発生から5日以内年金事務所
給与支払事務所等の開設届出書開設から1か月以内税務署
法人設立届出書設立の日から2か月以内税務署
青色申告の承認申請書設立から3か月を経過した日と1期目の事業年度終了の日の、早いほうの前日まで税務署
源泉所得税の納期の特例の承認申請定めなし(早いほうがよい)税務署

法人設立届出書は都道府県と市町村にも別に出します。期限や様式は自治体ごとに違うので、所在地の案内を確認してください。

いちばん短いのは社会保険の5日です。役員が社長ひとりでも、報酬を出すなら加入の対象になります。

いちばん重いのは青色申告の承認申請です。落とすと1期目の赤字を翌期以降に繰り越せません。創業期は赤字になりやすいので、ここは実損に直結します。しかも期限の作りが独特で、決算月の置き方によっては3か月より短くなります。

源泉所得税の納期の特例には期限がありませんが、早く出すほど楽になります。源泉徴収した所得税は原則として翌月10日納付です。この申請をしておくと、給与の支給人員が常時10人未満のあいだは年2回(7月10日と翌年1月20日)にまとめられます。提出した日の翌月に支払う給与から適用されるので、最初の給与の前に出しておくのが得です。

人を雇う場合は、労働保険と雇用保険の手続きが別に必要になります。こちらも期限が短いので、雇うと決めた時点で確認してください。

参考: 新設法人の届出書類(国税庁) / 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請(国税庁) / 新規適用の手続き(日本年金機構)

この書類、自分で作らなくてよいかもしれません

ここまで書いておいてなんですが、会社設立の記事で紹介したfreee会社設立やマネーフォワード クラウド会社設立で設立を進めたなら、上の表の書類はそのまま出力できます。

freee会社設立は、出力できる書類を一覧で公開しています。年金事務所向けの健康保険・厚生年金新規適用届、税務署向けの法人設立届出書・青色申告の承認申請書・給与支払事務所等の開設届出書・源泉所得税の納期の特例の承認申請書、都道府県税事務所向けの法人設立届出書。上の表がまるごと入っています。

マネーフォワード クラウド会社設立も「年金事務所や税務署に提出する書類を自動作成」としていて、あわせて必要な書類・提出場所・提出期限を確認できると案内しています。書類名の一覧までは公開されていません。

設立が終わった流れで、そのまま出力するのがいちばん楽です。入力済みの会社情報がそのまま入りますし、あとから思い出して1枚ずつ作るより手間がかかりません。あの記事で「設立から記帳までが一本の流れでつながっている」と書いたのは、この部分も含みます。

ただし市町村への届出は自分で確認してください。freeeの一覧は都道府県税事務所までで、市町村は入っていません。

参考: freee会社設立で出力できる書類 / マネーフォワード クラウド会社設立

自分で順番を決めるもの

会計ソフト、口座、カード。ここに法定の期限はありません。

期限がないので後回しになりがちですが、先に動かすほうが早く落ち着きます。理由はリードタイムです。法人口座は登記が終わって謄本が取れないと申し込めず、そこから審査が入ります。そして口座が決まらないと、カードも会計ソフトの連携も、売上の入金も始まりません。

順番はこうなります。

  1. 会計ソフトを決める——設立サービスと地続きなので、実は設立の手続きに入る前に決まっていることが多い(freeeとマネーフォワード、どちらを選ぶか)
  2. 口座を作る——会計ソフトと連携できるか、社会保険料や公庫の返済を引き落とせるかで選ぶ(法人口座はどこに作るか)
  3. カードを作る——引き落とし口座が決まってから

1年目の途中で、判断が要るもの

届出のように「出せば終わり」ではなく、決めるのに材料が要るものです。それでいて期限があります。

役員報酬は、設立から3か月以内に決めて、その事業年度は動かせません。会社に残すか個人に移すか、社会保険料の負担をどう見るか。ひとり社長の役員報酬の決め方にまとめました。

消費税とインボイスも1年目の判断です。設立1期目と2期目は基準期間がないため原則として免税ですが、期首の資本金が1,000万円以上だと1期目から課税事業者になります。また、適格請求書発行事業者の登録をすると、免税の扱いはなくなります。取引先が課税事業者ばかりなら登録したほうがよく、消費者相手なら急ぐ理由は薄い。相手次第です。

参考: 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例(国税庁)

資金調達を考えるなら、動くのは早いほうがよいです。創業融資は決算書がない段階の融資で、見られるのは計画の数字と自己資金の出どころ。創業融資で見られる数字に書きました。

1年が終わると、変わること

決算書ができます。ここが大きい。

創業融資は計画で判断されますが、2回目からは実績で見られます。創業時に出した計画と、できあがった決算書の距離も見られます。だから1年目の記帳は、税務署に出すためだけのものではありません。日々の入力の精度がそのまま効いてきます(入力でつまずきやすい場面)。

選択肢も増えます。経営セーフティ共済は「継続して1年以上事業を行っている」ことが加入の条件です。その窓口になる金融機関の側にも「1年以上の預金取引」という条件があるので、設立のときに地元の金融機関にも口座を作っておくと、ここで効いてきます。

そして、税理士に頼むかどうかを考えるのもこのあたりです。判断が必要な場面が増えたとき、数字を見せる相手ができたとき。会社設立──どこから税理士に頼むべきかと税理士費用に「相場」がない理由にまとめています。

まとめ

  • 設立後の作業は、期限で動くもの(届出)と自分で順番を決めるもの(口座・会計ソフト)に分かれる
  • 期限がいちばん短いのは社会保険の5日、いちばん重いのは青色申告の承認申請。落とすと1期目の赤字を繰り越せない
  • 届出の書類は、設立サービスを使ったならそのまま出力できる。1枚ずつ作り直さない
  • 期限のないものほど先に動かす。口座はリードタイムが長い
  • 1年目の判断は役員報酬(3か月以内)と消費税・インボイス
  • 1年が終わると決算書ができる。次の資金調達では計画と実績の距離が見られる

最初の1年でつまずきやすいのは、期限を落とすことよりも、判断を後回しにして選べる幅が狭まることのほうです。迷った時点でご相談ください。

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